事始

最近は「せどりとは、ブックオフで買った本をアマゾンで転売すること」というように紹介されていることが多いようだけど、もちろんせどりという言葉じたいはずっと前からあった。


小生も、20年ほど前の若きサラリーマンの頃、一度古本の転売で味をしめたことがある。


当時、仕事で埼玉・群馬・栃木をクルマで動くことが多かった。
土建屋に就職したので、あちこちの工事事務所を行ったりきたりしていた。
足利・桐生・前橋・高崎・下仁田草加・春日部・浦和・大宮あたりをうろちょろしてたわけですな。
移動中古本屋を見かけると、時間が許す限り中をのぞいていた。
北関東の古書店では澁澤龍彦著作集などがゾッキ本コーナーで埃まみれになっていたものだ。


確か池袋の芳林堂書店の最上階あたりに、幻想文学関係が充実した古書店があった(今もあるかもしれない)。
そこでは澁澤の本が大事にパラフィン紙で包まれて、数千円の値札がつけられていた。


距離にして数十キロ離れているだけで、同じ本がこうも違う扱いを受けていることに、関心を引かれた。


そのころ中央公論から『マリクレール』という女性向けの雑誌があり(今もあるかもしれない)、時折「○○のためのブックガイドベスト100」のような特集を組んでいたと思う(記憶だけで書いているから、事実関係がおかしかったらご指摘下さい)。


その『マリクレール』誌で幻想文学のブックガイドをやったと記憶する。
たしかそこで、ピエール・ギヨタの『エデン!エデン!エデン!』という本が紹介されていた。
中条省平あたりが紹介していたんじゃなかろうか(記憶曖昧)。

『エデン!エデン!エデン!』はその後一度も目にしたことはないが、同じギヨタ著の『50万人の兵士の墓』という本を神田の古本屋で100円で見つけたことがある。
カバーにはミシェル・フーコーの推薦文が印刷されていた。


これはひょっとして、と思って買って帰った。
で、小遣いの不足したある日、件の古書店に売りに行った。
ただし、そのときサンリオ文庫(カバー無し。タイトルは忘失)も一緒に持っていったのだが。
で、その2冊がなんと5000円!で売れた。
驚いた。


オレから5000円で買うということは、いったいいくらで売るのだろうか、と思ったが、確認はしていない。